広告右往左往

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企画のお作法

広告会社で「戦略プランナー」のような仕事をしてだいぶ長い時間を過ごしてきた。もっともここ数年は自らプランナーとして現場の仕事をする機会もぐぐっと減って、ラインマネージャーとしての仕事やら、同じ企画でも自分の会社の事業戦略考えたりと言ったどっちかと言うと経営サイドの仕事が増えたりしているし、クライアントさんと向き合う現場仕事でも、通常のコミュニケーション戦略のプランニングと言うよりは、共同での事業の立案やプロデュースやらと言った、なんだかややこしい仕事に首突っ込むケースが増えているなぁと思う今日この頃ではある。
きっとこれって、広告会社を取り巻く環境が変化していて、期待される役割も微妙に変化が続いていると言う事なのだと思う。
そして、それはチャンスでもありピンチでもあるのだなぁと日々実感しながら仕事をしている。

と言うように、色々と内容に色々と変化はあるものの、結局のとこと「企画」をする仕事に携わっていると言う事に変わりはないし、企画〜実施までを見通して仕事をする時の「お作法」は、企画の中身に関わらずあまり変わりはないのかな?と感じたりしたので、自分用にメモにしてみた。
(と言う事なので、せっかく読んでくださった数少ない読者の皆様には何の役にもたたないかもしれないのであしからず)

企画をする時の、もすごーく基本的な進め方の骨組みは、
1,Situationを理解し、
2,Complicationを解きほぐし、
3,Resolutionを提供する。
の三ステップで考える事。
課題が複雑だったり、今までやったことのないような仕事でも、いったんこの枠組みにばらして必要なことを収集、発散、収束と言う形で進めると、それが「ベストの凄いアイデア」にはならないかもしれないけれど、ひとまず一塊のアウトプットになってゆくし、それを「たたき台」にして、他の人たちの知恵を借りながらブラッシュアップしてゆく事が出来る。

1,Situation
簡単に言うと、「与えらている課題の周辺の状況や出来事の把握や情勢の整理」を現してるのですが・・・。
通常の広告屋の企画仕事だと、「市場」だったり、「競合」だったり、「消費者」だったりと言う事を指し示すのだろうけれど、もう少し広義に捉えると、課題を持ち込まれている会社(クライアントさん)自体の財務状況だったり「社内事情」だったり、取り巻く社会情勢やcommon senseだったりを含めた「状況」を判断するための要素と言う感じか?。これらを丁寧に収集して、「並べ替え」たり「継ぎ足し」する作業でSituationの把握が出来る。
結構ここでの作業次第では、次のステップのComplicationが炙り出されてくるって感じかなぁ?
作業的にはケースバイケースで、普通に競争戦略分析のフレームで済んでしまう事もあるだろうし、ぜーんぜん違った視点で行う事でもある。 けっこう最終的なResolutionの出口作りになっちゃう場合もあるので、丁寧にやることが大事かもしれないって思ってる。

2,Complication
簡単言えば「課題を解決するために越えなければいけない複雑さの理解」って事。
丁寧にSituationを分析していると自ずと見えてくる場合もある。気をつけたいのは、ここが作業の最初からわかりすぎている案件で、どうしてもその「見えている」(と思っている)仮説的な課題にめがけて前段のSituationの分析のゴールを合わせてしまって、本質的な課題の深さや広さに到達できなくなること。
Complicationと言うくらいで、どんな案件も大体の場合は、問題点や課題点は複雑に絡み合っている事が多いもの。
その辺りの諸々の事情を解きほぐしてゆく過程で、結果としてResolutionの提供に繋ってゆく感じ。

3,Resolution
文字通り「解決策の提示」って事
解決策に到達する過程では、もちろんある種のBig IdeaとかCreative Jumpのようなものが必要な場合が多いのは確かだし、そこに大きな期待がかかっている場合も多々あろうかと思う。
でも気をつけないといけないのは、ここまでの過程で解きほぐしてきた、分析や洞察を踏まえた上での飛躍が必要と言う事。
Innovationは必ずしも過去の延長線上にはないものかもしれないけれど(かのシュンペーターも本質的なInnovationとは創造的破壊であると言ってますが)、最低でも「今置かれている状況」を改善するものでなければ、解決策にはならないのだからそこはきちんと踏まえたうえで、飛ぶのならば飛ぶと言うように決めるべき。
そしてもう一点留意すべきは、「解決策」はきちんと「解決を提供」しなければいけないものであり、「考え方」や「方向性」を提示することではないと言う事を肝に銘じる。
自分がその課題を抱えている当事者(クライアント側)だったらば、机上の空論などには何の価値もないと思うのは明白。
「実行」できること、そしてその実行にどこまで「コミット」出来るのかの覚悟を提出するのが、Resolutionと言う事。

なーんて事を理想的には考えながら、つらつら仕事するわけなのだが、必ずしもこの通りにやっているとは限らないし、結果も全然ダメって事も多くて落ち込んだりもする。
ただ、この枠組みを使ってみてわかったことの一つに、実は多くの場合、ComplicationとResolutionは課題を投げかけて来たクライアントの現場に既に内在している(はず)と言う事だ。
従って、我々プランナー(或いはコンサルタント)は、それを可視化して方向性をつけ、最終的に実行支援をするために、阻害している要因を特定し、それを排除、改良するのが役割なのだと思う。
だから、「良い企画仕事」と言うのはofficeのデスクに座ってだけいても出来るものではなく、課題を投げかけてくれているクライアントさんの正面にきちんと向き合い、時にはその懐に深く入り込むと言う時間を多く持ちながらする事が大切なのだと痛感する。
そのためにも多くの業界、事例を経験して、その事例を応用しながらクライアントをエンカレッジする事が大切。

しつこいようだけれど、ビジネスとしての企画仕事は企画する事だけが仕事なのではなく、実行支援までにコミットすることだと思う。それをしない限りはビジネスにならないし、次につながらないのだと言う覚悟を持って取り組まないといけないと思っている。